咀嚼筋の緊張が引き起こす偏頭痛 - 鱗状縫合部の神経終末が鍵を握る【ストレス・歯ぎしり】

医療・健康

投稿日:2024年05月25日

要約
偏頭痛は、多くの人が悩む頭痛の一つです。その原因は未だ完全には解明されていませんが、近年、ストレスによる咀嚼筋の緊張が深く関与していることが分かってきました。 特に、側頭骨と頭頂骨の間にある「鱗状縫合部」と呼ばれる部位にある神経終末が、重要な役割を果たしていると考えられています。 この記事では、ストレスが咀嚼筋を緊張させ、鱗状縫合部の神経終末を刺激することで、どのように偏頭痛を引き起こすのかを解説します。

目次

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頭痛は、多くの人々が日常生活で経験する身近な問題です。しかし、その原因や機序についてはまだ完全に理解されているわけではありません。

特に、偏頭痛は神経生理学的なメカニズムが複雑で、医学や徒手療法を学ぶ者にとっても興味深いテーマです。

本記事では、鱗状縫合部の圧受容器と偏頭痛の関連性について詳しく解説します。

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偏頭痛とは

偏頭痛は、頭部の一側に強い脈打つような痛みを伴う症状であり、一般的に三叉神経の刺激によって引き起こされると考えられています。発作時には吐き気、光や音への過敏性などを伴うことが多く、日常生活に著しい支障をきたします。

偏頭痛は頭痛の中でも特に苦しい症状の一つですが、その発症機序については未だ完全には解明されていません。偏頭痛の発症メカニズムは複雑であり、神経系のさまざまな要因が関与します。

しかし、最近の研究から、鱗状縫合部の神経終末と三叉神経が重要な役割を果たしていることが分かってきました。

側頭筋と咬筋の緊張による影響

偏頭痛の発症には、側頭筋と咬筋の緊張も大きく関与していると考えられています。

側頭筋(Temporal Muscle)
側頭筋は側頭骨の側面から起始し、下顎骨の筋突起に停止し、下顎骨を引き上げる(閉口)筋肉です。
咬筋(Masseter Muscle)
咬筋は頬骨から下顎骨にかけて位置し、強力な咀嚼力を生み出します。

側頭筋と咬筋は咀嚼筋の主要な筋肉です。

これらが過剰に緊張すると下顎骨を強く引き上げます。すると顎関節に過度な圧力がかかり、顎関節の動きを制限し、口の開閉が困難になることがあります。さらに、顎関節周囲の筋肉や組織への過度の圧力は、炎症や疼痛を引き起こす可能性があります。

主要な咀嚼筋

顎関節の圧迫が引き起こす問題

関節包と周囲の組織の炎症
関節包や関節円板が圧迫されることで、炎症が起こりやすくなります。炎症は周囲の神経を刺激し、痛みを引き起こします。
神経の圧迫
顎関節周囲には三叉神経(第V脳神経)の枝が豊富に分布しています。特に下顎神経(V3)の枝が影響を受けやすく、痛みや感覚異常を引き起こします。

側頭骨の引き上げと鱗状縫合の圧迫

側頭筋の緊張が続き、顎関節の圧迫が持続することで、次第に側頭骨全体が上方に引き上げられ、鱗状縫合(側頭骨と頭頂骨の間の接合部)が圧迫されることになります。

咀嚼筋の影響

鱗状縫合部とは

鱗状縫合は頭蓋骨を構成する縫合線の一つで、側頭骨と頭頂骨の間に位置しています。この縫合線には神経終末と呼ばれる神経の受容器が高密度に分布していることが知られています。

これらの神経終末は主に圧力や張力の変化を感知する圧受容器で、縫合部に掛かる圧力変化を感知する役割を持っています。頭蓋内圧の上昇や側頭筋の過剰な緊張は、鱗状縫合部に圧力をかけ、神経終末の圧受容器がその変化を感知します。

鱗状縫合と偏頭痛の関連

側頭骨の引き上げによる鱗状縫合の圧迫は、偏頭痛の発症に関与する可能性があります。以下のようなメカニズムが考えられます:

三叉神経の刺激
鱗状縫合の圧迫が三叉神経(第V脳神経)の第1枝(眼神経)、第2枝(上顎神経)、第3枝(下顎神経)に影響を与えると、痛みの信号が増強され、偏頭痛が誘発されることがあります。三叉神経は顔面の広範囲に感覚を供給しているため、その刺激が偏頭痛の発症に大きく関与します。
血管の変化
側頭筋の過緊張は側頭部の血管に影響を与え、血管が収縮します。血管収縮が続くと反射的に血管が拡張し、頭痛の典型的な症状が現れます。これは三叉神経血管系反射と呼ばれ、偏頭痛の発症に寄与します。
筋緊張による血管収縮
咬筋や側頭筋の過度な緊張が続くと、頭蓋内外の血管が圧迫され、血流が低下します。この血管収縮と血流低下が、脳の血管拡張反応を引き起こし、偏頭痛が発生することがあります。
中枢神経系の過敏性
顎関節や側頭骨の圧迫が続くことで、脳幹や中枢神経系が過敏になり、痛みの閾値が低下します。これにより、通常では痛みを感じない程度の刺激でも偏頭痛が引き起こされることがあります。

三叉神経への入力と副交感神経系の賦活

鱗状縫合部の神経終末からの入力は三叉神経を介して中枢神経系の脳幹に伝わります。

脳幹ではこの入力を受けて副交感神経系が賦活され、血管拡張が引き起こされる可能性があります。

血管が拡張すると、周囲の三叉神経が伸ばされ、神経が過剰に刺激される状態になります。この三叉神経の異常興奮が偏頭痛の発症に深く関与していると考えられています。

つまり、鱗状縫合部の圧受容器が頭蓋内圧や咀嚼筋の筋緊張を感知し、三叉神経を通じて副交感神経系の賦活と血管拡張を引き起こす。その結果、三叉神経が刺激され偏頭痛が発症する、という一連の機序が示唆されているのです。

偏頭痛の症状発現

痛みの伝播:

  • 側頭筋と咬筋の緊張による顎関節および側頭骨の圧迫が、三叉神経を通じて痛みを伝播させます。
  • 三叉神経の第1枝と第2枝が関与することで、前頭部、側頭部、上顎、目の周囲などに痛みが広がり、偏頭痛が発生します。

反射的な血管拡張:

  • 血管収縮に続く反射的な血管拡張が頭痛の発作を引き起こし、脈打つような痛みが現れます。

鱗状縫合部の神経終末の意義

鱗状縫合部の神経終末、特に圧受容器の存在には重要な意義があります。

これらの受容器は頭蓋内圧の変化や頭蓋骨の動きを感知する役割を持っています。

頭蓋内圧が上昇したり、側頭筋が過剰に緊張したりすると、鱗状縫合部に圧力がかかります。その圧力変化を神経終末の圧受容器が感知し、三叉神経を介して脳幹に伝えます。

脳幹ではこの入力を受けて、筋緊張や内圧を抑える副交感神経系に働きかけます。つまり、鱗状縫合の受容器は、頭蓋内圧亢進や側頭筋緊張に対する防御反応の一環として機能していると考えられているのです。

しかし、この防御反応が過剰に働いた場合、血管拡張がより大きく反応し、周囲の三叉神経が伸ばされて偏頭痛が発症する可能性があります。

偏頭痛に対する徒手療法の可能性

偏頭痛の発症機序に咀嚼筋の緊張が関与していることから、徒手療法による筋緊張の緩和が有効である可能性があります。

側頭筋や咬筋の緊張をマッサージやストレッチングで和らげることで、顎関節や鱗状縫合部への圧迫を軽減できます。これにより、三叉神経への刺激が抑えられ、偏頭痛の発症リスクが低下する可能性があります。

また、頚椎や頭部の可動域を改善することも重要です。頚椎や頭部の可動性が低下すると、筋肉の緊張が高まり、偏頭痛のリスクが上がる可能性があるためです。

まとめ

偏頭痛の発症機序には、鱗状縫合部の神経終末と三叉神経が深く関与していることが分かってきました。

鱗状縫合部の圧受容器が頭蓋内圧や筋緊張を感知し、副交感神経系の賦活と血管拡張を引き起こします。その結果、三叉神経が刺激され偏頭痛が発症すると考えられています。

また、側頭筋と咬筋の緊張が顎関節や鱗状縫合部への圧迫を引き起こし、三叉神経刺激の一因となっている可能性もあります。

徒手療法による筋緊張の緩和や可動域の改善は、この一連の機序を抑制する効果が期待できます。

偏頭痛は複雑な症状ですが、発症機序が徐々に解明されつつあります。今後さらなる研究が進み、より効果的な予防法や治療法が見つかることが期待されます。

適切な姿勢や噛み合わせの調整、ストレス管理、筋肉のリラクゼーション法などの対策が重要です。また、専門家の診断と適切な治療を受けることが、顎関節症や関連する問題の管理に役立ちます。

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ひがしむら整体院

東村哲男

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