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「業務委託」の名の下で時間拘束は許されるのか ――サロンにおける偽装請負の構造

「業務委託」の名の下で時間拘束は許されるのか ――サロンにおける偽装請負の構造

お金・FP

投稿日:2024年05月26日

要約
― 業務委託なのに、時間で縛られていませんか? リラクゼーションサロンや美容院で働く業務委託スタッフの方から、 「業務委託なのに、出勤時間や曜日が固定されている」 「休みたいと言うと、契約終了を匂わせられる」 といった声を耳にすることがあります。 収入源を失う不安から、 「契約書に書いてあるから仕方ない」 「業界では普通だから」 と我慢してしまうケースも少なくありません。 本記事は、 「業務委託における時間拘束」の考え方を法的構造から整理し、 今の働き方が本来の業務委託と整合しているのかを冷静に確認するための一般論の解説です。 まずは業務委託の基本を押さえたうえで、 なぜ「時間拘束」が問題になるのか、 実務でよくある「スケジュール協議」や「代役・代替日」はどう考えるべきかを見ていきます。

目次

1.業務委託とは何か

そもそも業務委託とは何か、また雇用との違いを簡単に説明すると

業務委託の本質

業務委託とは、
特定の業務・成果の遂行を目的とする契約であり、

  • 場所
  • 時間
  • 方法

について、原則として受託者の裁量に委ねられます


雇用関係ではないため労働を課せられるものではないということです。


発注者が管理・統制するのは
「成果」「業務内容」「納期」であって、
労働そのものではないのです。



労働契約との違い

対して労働契約では、

  • 働く場所
  • 働く時間
  • 働き方(指揮命令)

が使用者により管理されます。

この「管理の有無」こそが、
業務委託と労働契約を分ける本質的な違いになります。


✅️ 雇用のようなシフトという時間拘束は業務委託契約の性質からは外れています。



2.偽装請負とは

偽装請負の定義

偽装請負とは、
業務委託・請負という契約形式を取りながら、
実態としては労働契約と評価される状態をいいます。


判断においては、

  • 契約書の名称
  • 書面上の表現

ではなく、
業務の実態(指揮命令・時間拘束など)が重視されます。


偽装請負と判断された場合の法的帰結

仮に偽装請負(=実質的な雇用)と判断された場合、
発注者側には大きな義務やリスクが生じ得ることになります。


過去に遡って​

  • 残業代等の支払いの義務​
  • 有給休暇の付与・未取得分の補償
  • 社会保険料の事業者負担文の支払い​


賃金全額払いの原則(労基法24条)に反した​

  • 設備利用料​
  • 備品使用量​
  • その他名目による控除分​

が変換対象となる可能性​


スタッフへの報酬が給与となるため​

  • 外注費ではなく人件費​

と評価されることにより、税務上の処理・追徴課税の問題が生じる可能性​



契約の形式より実態が優先される

労働法は強行法規であり、これに反する契約条項は無効


時間拘束・人的拘束を前提とした契約は、
たとえ「業務委託契約」と記載されていても、
その部分は無効と評価され得ることになります。


「時間拘束」は雇用契約の本質的特徴であり、
それを前提とする業務委託契約は偽装請負としての要素となり得ます



✅️ 雇用関係でないのに労働者のように扱う状態のこと​​を偽装請負
✅️ 取り決めや書面ではなく実態で判断される



3.時間拘束についての法的整理


時間が含まれる事業間契約が許される場合

業務委託であっても、
時間が契約要素に含まれるケースは存在します。


代表例が単発の請負

例:引っ越し業者

  • 「◯月◯日◯時に作業開始」
  • 「◯時までに作業完了」

この時間指定は、

  • 業務の結果達成条件
  • 納期・期日指定

に過ぎず、労働時間の管理や拘束にはなりません


しかしながら単発請負においても、
指定されるのは「時間」ではなく「納期」になります。

納期を社会的に明確化するために日時という表現が用いられるだけであり、
業務委託契約の本質は時間的拘束ではなく成果の完成になります。



時間拘束を前提にした業務委託の問題点

一方で、継続的な業務委託契約において

  • 毎週同じ曜日
  • 毎日同じ時間
  • 恒常的・継続的
  • 原則変更不可
  • 休みは許可制

という運用は、

  • 業務の成果条件ではなく
  • 労務提供の管理

であり、
業務委託の前提を逸脱しています

曜日や時間を固定する雇用関係のような
「時間的拘束」「人的拘束」を前提にしたシフト管理の概念は、
雇用性(労働者性)の重要な要素の一つです。



4.「スケジュールの協議」とは何か


契約条文の整理

本件業務を甲乙別途協議のうえ合意したスケジュールで行う。

よく見かけるこの条文ですが、これは曜日や時間の固定を意味するものではありません。


業務委託契約におけるこのような条文から読み取れるのは

  • 「協議」:一方的決定ではない
  • 「合意」:双方の意思一致が必要
  • 「スケジュール」:業務実施の予定・目安

​という点です。


「その曜日・その時間帯で契約を交わした」​
​という事実が合ったとしても

それは当初の合意内容を​示すに過ぎず、
将来にわたって

  • 恒久的な曜日・時間固定
  • 原則変更不可
  • 許可制
  • 一度決めたら覆らない

といった運用を正当化する一文にはなりません。​


業務委託は時間の拘束を前提にしていないから

  • 一度決めて終わりではない
  • 必要に応じて再協議されるもの

と読むのが自然になります。


最初に決めたスケジュールで固定的に働き続けるという発送は
業務委託ではなく、雇用のシフト管理という概念近づきます。


お店でこんなやり取りはないかな⚠️

店舗のスケジュールの決め方を確認してみてください。


固定と言われているのにもかかわらず、
月毎のスケジュールが出る際に

  • 「確認のため」と言いながらサインを求められる
  • 手書きで予定を書かされる​

といった運用はありませんか​


これは外部に対して​

  • 毎月協議している​
  • そのうえで同意を得ている​
  • 委託者からの要望を通している​

という、こちらからは強制はしていないという体裁を取る

ための運用であるケースが少なくありません​。



協議の結果、合意に至らない場合

「協議のうえ合意」に至らない場合の帰結は、

  • その条件では契約しない
  • 継続しない

という契約関係の整理であり、​

  • 強制
  • 許可
  • 従属

ではありません。


​しかし、条件が合わないことを理由に、一方的な契約解除もありえません。


問題となるケース

数日休みたい
 ↓
それなら契約解除・継続不可

という反応は、

  • 事実上の威嚇・報復
  • 優越的地位の濫用
  • 下請法違反の可能性

を含みます。


継続的契約関係では、

  • 信義誠実の原則(民法1条2項)

が適用され、
契約解除の自由も無制限ではないのです。


​※ここでは割愛しますが、フリーランス新法の視点も関係してきます。



5.休む場合の代役・代替日の調整について

​休み希望がある場合に「穴埋めをする」「自分で代役を探す」といった話をよく耳にします。

しかし、これは業務委託の原則から見るとおかしな運用です。

  • 代役・代替日の設定
  • 誰を配置するか、どう補填するか

これらの行為は人員管理であり、店舗管理者や運営による店舗業務になります。


また​​

  • 代役を立てる際の追加の報酬が発生する
  • 別の人材を確保するためにコストがかかる
  • あるいはその日の売上機会を失う

これらはいずれも事業リスク・運営コストです。


したがって​
人員確保や穴埋めは店舗運営業務であり、リスク負担の帰属でみても
委託者側の義務であり、個々の受託者に一方的に転嫁されるものではありません。


本来コストがかかり、委託者側の業務である「代役探し」を強制することは、
その業務行為自体に対価が支払われていない以上、受託者に無償労働を課すことと同義です。

もしそれを義務のように扱うなら、実質的には指揮命令関係の形成となり、
業務委託の根幹を揺るがす「労働者性」を強める要因となります。

「休まれると困る」「穴が空くと回らない」といった事情があったとしても、
それは店舗運営側の問題であり、受託者に無償で解決を求める理由にはなりません。



義務と責任の分離​


「業務委託として責任をもって替えを探せ」
「お店に、お客様に迷惑がかかるだろ」

という主張はもっともらしく聞こえますが、
実際には経営上の責任を委託者に押し付けているだけの責任転嫁に過ぎません。

業務委託契約として成り立たせるためには
この義務・責任の帰属関係が明確に分離されているかどうかが、
民事においても契約の成立性や実態判断の材料となります

​​

✅️ 店舗運営上の人員配置は、本来、運営側の管理責任



補足(信義則上の調整)

ただし、

協議のうえ決定された予定の急な変更に関しては

原則、代役を探す義務は本来ないが、信義則上の調整は生じ得る可能性はでてくるかも知れません

しかしこれはあくまで協力であり、義務ではありません。


代役が見つからないことを理由に、

  • 契約解除
  • 不利益な取り扱い

をは許されません。



まとめ​

本記事を通して見てきたように、業務委託契約は
「時間」や「勤務の指示」を前提とする拘束型の働き方とは異なります。

契約書面にどう書かれていても、実態として

  • 時間や曜日の固定
  • 代役探しの強制
  • 休みの責任追求

が行われている場合、それは業務委託ではなく労働契約的構造に該当するでしょう。

形式上は「業務委託」として運用していても、法律上の評価は実態で決まるという点が最も重要です。


「責任」の履き違えに注意⚠️

店舗側が使う「業務委託としての責任」や「プロとして当然」という言葉には、
経営上のリスクをあなたに押し付けるための言葉にすり替わっています。

受託者が負うべき責任は、合意した業務を遂行することであって、
店舗を円滑に運営するための“人員確保”や“代役調整”ではありません。​

これは運営(発注)側が負う経営責任の範囲です​


店舗を円滑に運営するための回すための「駒」として自分を捧げることではありません。



「責任」の履き違えに注意

店舗側が使う「業務委託としての責任」や「プロとして当然」という言葉には、

しばしば経営リスクの転嫁が隠れています。

受託者が負うべき責任は、合意した業務の遂行であって、

店舗を円滑に運営するための“人員確保”や“代役調整”ではありません。

それは、運営(発注)側が負う経営責任の範囲です。


区別すべき3つの責任軸

  • 成果責任:受託者が負うべき業務遂行の責任
  • 運営責任:委託者(店舗運営側)が負う人員・経営上の責任
  • 法的責任:実態が雇用に近いと判断される場合に発生する法的リスク

この3つの責任を混同しないことが、業務委託関係の健全な成立条件です。


健全な関係の条件

  • 協議は「命令」ではなく「合意」である
  • スケジュール変更の自由が確保されている
  • 時間拘束・人的拘束が存在しない
  • 代役・代替の責任は運営側にある

これらの原則を守ることが、契約上の安定だけでなく、双方の信頼関係の土台になります。


自身の働き方を見直し、形式に惑わされず、実態から契約構造を判断すること――

それが、あなたの専門性を守り、自分の時間を取り戻す第一歩です。




参考・根拠

  • 業務委託とは(民法)
  • 偽装請負とは(成立や要件)
  • 運営側の店舗管理責任と委託者責任の分離
  • 優越的地位の濫用・下請法違反
  • フリーランス新法における発注者の義務

法的原則

【原則】
契約の自由(民法)

【例外・制限】
強行法規に違反する契約は無効
公序良俗に反する契約は無効(民法90条)
信義則に反する契約解除は無効(民法1条2項)
優越的地位の濫用は違法(独占禁止法)


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東村哲男

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